連載記事その8『際立つ高品質経営を目指して』大久保 尚武 氏(積水化学工業)

「際立つ高品質経営を目指して」

積水化学工業株式会社 名誉顧問
日本品質管理学会第44年度 会長
大久保 尚武 氏

 

 

世界中の人々を恐怖と混乱におとしいれた新型コロナウイルスの蔓延も、ワクチン開発が考えていた以上の早さで成功したこともあり、おそらくあと1年もすればかなり沈静化してくると思われます。そして今、「ポストコロナ」の世界がどうなるのかがいろいろ議論されており、「在宅勤務」とか「Web会議システムによるリモート会議」などが定着するのかどうか、興味のあるところです。

しかしそうしたやや小型の変化はともかく、コロナ下でも着実に進む社会の根本的な大変化がわたしは気になります。次の2つです。

1.AIを駆使したデジタル変革による社会革新

IT(情報技術)が社会インフラとしてあらゆる分野をカバーし、買物、医療、教育、交通、さらには行政サービスなどを一変させるでしょう。

2.地球環境問題への対応

2020年にも100年に1度というような気候変動にみまわれ、各国ともいよいよ待ったなしです。脱CO₂が主体ですが、水問題、ひいては食料問題もあります。

こうした流れの変化は今後も止まらず続くという認識は、世界の有識者の間でほぼ一致しています。もちろん日本も例外ではなく、今年(2021年)からスタートする内閣府の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(5か年計画)でも明確にこの2つの流れへの対処が本計画の幹であることを明示しています。

わたしが申し上げたいことは、向かうべき目標ははっきりしている、ということです。今後何十年かは世界中がこの2つの目標に向かって進む、そして熾烈な開発競争がそこでくりひろげられ、日本もこの戦場で戦い勝たねばならないということです。

ではわれわれの武器は何か、それが問題です。わたしは「際立つ高品質」これを徹底的に磨き上げるしかない、そう考えます。かつて日本はこの武器で世界経済を席巻しました。残念ながら今やその面影もおぼろですが、「意識改革」さえすれば再び戦う力はあると信じます。いまや「普通のレベルの品質」では絶対に世界では勝てないことは、みなさんご存知のとおりです。そして大事なことは、これから戦う場は全く新しい未知の世界だということです。そこで求められる「高品質」とはどういうものか。そういった基本的なことから深く掘り下げて検討しなければならないでしょう。

品質活動は新しい段階に足を踏み入れたと思います。意識改革が必要です。今後世界で戦うのは、若く小規模なベンチャー企業、あるいは大企業内の社内スタートアップとして発足した独立企業が中心となる(なってほしい)と思います。これまでの伝統的な古い品質活動を知らない世代が中心となるのです。

今回5つの品質関連組織の連携組織である「日本品質協議会(JAQ)」が、その活動の第一歩としてこのポータルサイトを立ち上げたことを、わたしは本当にうれしく思います。「品質」は企業家にとっても研究者にとっても、極めて刺激的で魅力ある先端技術分野であることをしっかり共通認識として共有して活動していただきたいと思います。

JAQがさらに活動範囲を広げ、深めて、世界と戦うための基盤をしっかり固めてくださることを、心より期待しております。

(完)