<前文>
私たちには伝承しなければならないことがあります。
日本は奇跡の国と呼ばれました。
東日本大震災の被災地では、
被災者の方々は支援物資の配布を受けるために静かに列を作っていました。
しかし、それは奇跡ではありません。
むしろ日本にとっては、当たり前のことだったのかもしれません。
私たちの先達は信じていたのです。
誰もがどんな時でも、誠心誠意生きなければならないことを。
自らの誇りにかけて、自らを裏切らないように生きるべきであるということを。
いかなる苦難の時においても、その信念を支えとしてきたのです。
自身だけのための行動が起きるはずがない、
日本社会には、苦しい時でも楽しい時でも、
等しく幸福を分かちあう人々の共同体であるとの信頼が秘められているのです。
先達は信じていました。
匠は、己の道に恥じないよう、日々作り続けていることを。
匠は、己の技芸の至らなさを知り、日々精進を続けていることを。
商人は、己の道に恥じないよう、己の眼に適うものを商っていることを。
商人は、利を独り占めにはせず、信用を一とした商いに努めていることを。
そして、優れた先達はそのような匠や商人を用達し、贔屓にしました。
私たちは、これが日本社会の発展に秩序を与えた倫理と理念だと信じています。
このように、日本のものづくり、ことづくりは、作り手、売り手、買い手の間の、誠意と精進から生まれる信頼で成り立ってきました。
そして日本社会は、この信頼を損なわないために、学び、育ち、鍛え、絶え間ない改善を進めてきました。
私たちは、先達が励んだ質が高く、品格を備えたものづくりやことづくりに、
今日の匠も、商人も、そして顧客も、互いに切磋琢磨することが、
今もそして将来でも必要なことと考えます。
一方で、私たちには考えなければならないこともあります。
私たちは、国際社会の一員として、
これからの社会が必要とする質と品格に関わる倫理と理念、
そして、将来に託すべき新たな仕組みと行動とを
次世代を担う方々と共に再考し、
創造しなければならないのです。
日本社会が国際社会の一員としての役割を果たさなければならない
この時代にあって、
将来の世代の匠は、商人は、そして市民は、
何を琢磨すべきなのでしょうか。
何を信頼すべきなのでしょうか。
私たちは、これまでの日本の良き営みを継承し、
新たな社会の営みを創生する一助たるべく、
意を同じくする日本の全ての方々に呼びかけ、
その総意に基づいてJAQを創設することを決意しました。
<JAQ設立宣言>
私たち、
JAQに集う同志は、
自らの活動の質、
自組織のマネジメントの質、
更にはそれらの成果の質を正視し、
社会とその未来の健全な発展のために
それらの質を琢磨することに
誠意と創意と叡智とを尽くすことを誓います。
私たちはこの誓いを共にする産官学の同志や専門家と共に、
品位と上質を希求する視点から、
日本の是正すべき側面を改め、
日本と世界とが増長すべき活動を推し進め、
社会が必要とする新たな仕組みを築くために
必要な提言や行動計画を発出し続けることで、
あるべき将来の社会に貢献することを誓います。