連載記事その9『食品小売業界への品質経営の普及際立つ高品質経営を目指して』原 和彦 氏(アクシアル リテイリング)

「食品小売業界への品質経営の普及際立つ高品質経営を目指して」

アクシアル リテイリング株式会社
取締役社長 原 和彦 氏

 

 

 

私たち食品スーパーマーケット(以下食品SM)は、約60年前に日本に伝来して以来、発祥の地である米国の流通業をモデルとして成長してまいりました。

その米国では、1930年にニューヨーク州に第一号店がオープンして以来、今でも激しい競争を繰り広げながら、価格の安さと便利さに革新を起こし続け、米国を代表する産業として成長を続けています。毎年米国メディアが発表する「働きたい企業ランキング」には、上位に複数の食品SMが名を連ね、そのステータスの高さがうかがわれます。

一方、日本では食品SMをはじめとした小売業は、残念ながら不人気業種の域を出ることができていません。

大卒の有効求人倍率(令和3年卒)で見ても、全産業平均値が1.5倍なのに対し、小売業は7.2倍と高く、人材の確保が業界の大きな課題となっています。これはおそらく他の産業に比べ生産性が低く、待遇面で見劣りすることが要因のひとつと思われます。

残念ながら食品SM業界の現場は仕組みづくりが遅れているため、なかなか生産性が向上していません。そのうえ競争が激しいため、ついつい品質よりも価格ばかりに目が行きがちになるのも、業界の悪しき体質です。

豊かな生活をご提供するには価格水準の切り下げだけでなく、商品やサービス、売場の快適さといった“お客様から見える品質”も上げていかねばなりません。そしてそのためには物流やマネジメントなど、お客様からは見えにくい“経営全般における品質”に磨きをかけ、生産性を上げていく必要があります。しかし、改善活動にどのように取り組めばいいのかわからず、悩んでいる企業が多いのが実状です。

そこで4年前より、302社の食品SM が加盟する全国スーパーマーケット協会内に「品質改善委員会」を立ち上げ、各社の改善活動の推進支援をはじめました。

初めて10社による成果発表会を行った一昨年は、300人分の観客席が全く足らず、多くの立ち見観客が出ることとなりました。そして昨年2月の成果発表会では会場を広げ対応したところ、約1000人もの観客が訪れ、改善活動への関心の高さがうかがわれました。

今年は新型コロナウィルスの感染拡大によって、規模を縮小し、すべてオンライン配信という形を取らざるを得なくなりましたが、改善活動を取り入れようとするニーズについては一定以上の感触を得ています。

私たち食品SMはコロナによって、日常生活に必要不可欠な産業であることがあらためて認識されるようになりました。また、有事の際だけでなく、日々の暮らしにおいても豊かさを提供し続けていくことが期待されています。

その期待に応え続けていくためには、商品やサービスのみならず、経営における様々な品質を、従来のように経験と勘だけに頼るのではなく、科学的で合理的に磨き上げを行っていく必要があると考えています。

食品SM業界内への改善活動の普及は始まったばかりで、まだまだ手探りの状態です。

今後もより以上の社会貢献を果たすとともに、働き甲斐を感じる産業でありたいと願っています。これからも引き続き、協議会の皆様をはじめとした先進事例を真摯に学んでいきたいと思っています。